悪い男

b0058500_18412815.jpg秋の夜長、小池真理子さんの「レモン・インセスト」を読みました。

近親相姦のお話です。さまざまな男が出てきます。

ヒロインは喫茶店のアルバイト。と云っても、店のオーナーの愛人。

相当額のお手当てをもらって、ぶらぶらアンニュイな愛人生活を送っています。

もともとその関係は、ヒロインにとって恋ではなかったのですが。

そんなとき、弟と再会します。

生まれてすぐに誘拐された弟が、美しい青年になって目の前に現れたのです。

喫茶店のオーナーは、露骨に体だけを求めるような、悪い男ではないけれど、嫌な男になってゆき、弟との禁断のプラトニックラブに堕ちていくヒロインから、ぼろぼろの状態で捨てられます。

オーナーが嫌な男になってゆくプロセスでのヒロインの心の流れが、女性に共感を得ると思いました。

又、勧善懲悪の悪人ではない、嫌な男を視つめるヒロインの視線が伝わります。

どの程度のところから始まった嫌さ加減なら、とことん嫌な男になりはてるのか…その移り具合にリアリティも感じました。

一方、弟は一貫して理想の美青年として表現されています。

決して結ばれてはいけない、愛する相手だからこそ、人間を超越した理想に成りえます。

そして、弟との恋は、苦しまされる男になることを拒むかのように、突然のエンディングで物語は終わります。

この小説が映画化されたなら、嫌な男のオーナーを演じる役者の方が演じ甲斐がありますね。

美しい弟は、いまどきの美をあてがうと、それで用を足しそうです。

だからこそシナリオライターは嫌な男を描けなければいけません。

苦悩と恋が紙一重のような、嫌な男、悪い男を、脇役でなく描けたなら、と思います。

森雅之が演じた、「浮雲」の男。

悪くて、嫌な男で、それでも愛さずには生きていけない男としては、わたしにとっては最高峰です。

愛が描かれている作品に切に出会いたいと思う、そんな秋ももうすぐ終わりを告げます。
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by nomelier | 2004-12-15 18:41 | Book
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