東京へ芝居を観に行ってきました。
知人のシナリオが戯曲になり、公演されるとのこと。大阪弁のシナリオがどのような戯曲になっているのかを楽しみに向かいました。 会場では、最前列のチケットを取ってくださっていたSさんのおかげで、びしゃびしゃ飛んでくる役者さんの唾にまみれ、ワールドをしっかり堪能でき、懐かしいベタな大阪人情の芝居に、泪しました。 東京育ちのSさんはと云うと、私の泪が理解できないようでした。 ほんのちょっと前に東京に帰郷しただけなのにね! 一方、劇団のネームバリューにあわよくばと藁をも掴もうとする人がちらほらどころか…。 淋しく感じました。 人が集まるところが苦手な訳は、人の欲が蠢いて、酸素が少なくなるからなのかも知れないと、東京物語のおばあさんのように私は思いました。 東京は大阪よりも緑が多くて美しい。煩雑な大阪の匂いが染みついて、もう戻れない私の人生。なんてちっぽけな私の人生。そしてささやかな幸せもある私の人生。 そう思うと、なにも考えずに原宿を歩いていた、若い頃の自分が懐かしい。 東京では夢追い人の数もどれほど多いことか。 足掻いて掴もうとした無数の夢が、夜ごとバブルのように消えてゆく吐息の音さえ、お洒落な音楽にあわせて流れ去りそうな町を後にしました。 帰途、吉行淳之介氏のエッセイを車内で読みました。 「思いやりってのを煮詰めていくと、結局自分の感受性が傷つかない自衛のためのような気がする。 相手が傷つくのを見て、こっちが嫌な気持ちになるのを防ぐための作業が、結果として思いやりになるって場合がほとんどだ」と。 でも、理屈のない人情もあるんや、大阪には! と拳を握りつつ、それでも明日からまた、人間を煮詰め、掘り下げ、共に学べる仲間がいる幸せをかみしめて…。
by nomelier
| 2004-11-14 21:05
| Diary
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