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港町で待ってます

b0058500_19263235.jpg年末、港町へ旅をしました。

潮の香り。
海の幸の飯屋横丁。
鄙びた灯台。
客もまばらな土産屋商店街。

そぞろ歩きつつ、港町にはメロドラマが似合うと思いました。

港町で思い出すのは「シンデレラ・リバティ」と云う映画。

薄幸の母子を愛すようになった水兵が、彼女たちを自暴自棄な生活から救い出そうと結婚を決意するのですが…。

哀愁に充ちた、待つ女のドラマでした。

ニール・サイモンの「第二章」や「グッバイガール」のマーシャ・メイスンが、市井の女性を好演していました。

港町には待つ女の光景が似合います…

 「待てど暮らせど 来ぬ人を」
 「あなたを待てば 雨が降る」 
 待つ歌は多く、待つ心にはポエムがあります。

二十代の頃、パリへ一人旅をしました。

シャンゼリゼ通りに面したカフェで、エスプレッソを啜りながら、通りに佇む、恋人を待っている婦人を眺めた時のこと。

小豆色のスカーフが黒いコートに纏わり棚びき、瞳が恋に潤んでいた彼女。

待っている女性を眺めた印象は、今も残ります。

恋人が目の前に現われて、幸せに輝いている瞳よりも、待っている時の瞳の方が、奥深いところを彷徨っているのかも知れません。

大阪は振り込め詐欺でも、日本で一番ひっかからない町と云います。

信号も守らない、せっかちな人が多い大阪。

でも、待ってみてもいいのかも知れません。

さまざまな人が、命を宿し、旅に出る港。あなたの旅の行き先はどこですか?

焦らないで、じっくり進んでくださいね。
港町で待ってます。
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by nomelier | 2005-01-27 19:28 | Diary

冷ややかなリアリティ

b0058500_18295645.jpg一昨年末、近松門左衛門の『傾城反魂香・土佐将監閑居の場』と云う歌舞伎を観たときのこと。

吃音であるが故に絵を巡る争いに破れ、閉居している浪人絵師と、彼を支える妻との夫婦愛のお話です。

妻の一途なやさしさに涙し、そして、感動とは、人として当たり前の情を描いたものなのだと思いました。


その感動がなぜ映えるのかと云うと、冷ややかなリアリティが一方で描かれているからです。

夫婦は精根尽き果て共に自害しようと決意。

最期にと一心込めて描いた自画像が、手水鉢を突き抜ける奇跡を生み、一挙に絵師は芸術家に格上げされます。

それまでは夫婦揃ってボロ衣だったのですが、絵師はひとり豪華な衣装に着替え、歓喜の中、危難の姫君救出へ向かう処で幕を閉じます。

その時、支え続けてくれた依然ボロ衣の女房のおかげと、絵師が露も思わない処が、男と云うものを視つめる、冷やかなリアリティだと思いました。

もうひとつは昨年二月に上演された「放浪記」。

このお芝居は女の生き方を教えてくれます。

男に恋をしては裏切られる主人公。

原作は林芙美子の自叙伝、脚色は菊田一男。

菊田一男の本が素晴らしいです。

承では芙美子の天性の明るさと絶対に凹まない気性を追います。

カフェでどじょう掬いを踊る年増女給の芙美子。
男に媚を売ることが嫌いな彼女の勝気さが伝わります。

しかし、その場面の場面尻には、生活苦から新たな恋に突入。

「放浪記」が出版されることを知り、男女雑居寝の貧しい宿で、大喜びででんぐり返り。
有名な場面です。

明るく進行するのですが、ラスト、有名作家となった芙美子は文机に小説を書かねばと伏したまま亡くなっていきます。

ライバルの女流詩人がそっと毛布を肩にかけてあげて、呟きます。

「幸せではなかったのね」と…。

男から男へ、そして裏切られ、文筆に命を賭けては這いあがり、それでも彼女は幸せではなかったことを観客に伝え、幕はおります。

冷ややかなリアリティと、承での人物像の明るさの表現。

菊田一男は神様だと思いました。
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by nomelier | 2005-01-06 18:29 | Drama

弱みを見せたい相手と強みを見せたい相手

b0058500_1746630.jpg好きなシーンです。

「その夜、彼女はブランデーをグラスで大きくあおる。
愛を捨て、金もうけに生きようと決心した夜だ。その時、粗野だがたくましく生きるレット・バトラーが訪ねてくる。
憎みながらも惹かれているスカーレットは、酒のにおいを消すためにあわててオーデコロンでうがいをするのだ。(略)
そして案の定、オーデコロンは何の役にもたたず、酔っていることをレットに見抜かれ、彼のプロポーズを受けてしまう」(日経新聞より)

「風とともに去りぬ」のこのシーンは忘れられません。

オーデコロンでうがいをするスカーレットの心理が、分かるからです。

もしアシュレーが訪ねてきたら、彼女はオーデコロンでうがいをせず、酔ってしまっている弱い自分をみつめて欲しいと思ったことでしょう。
あなたのせいで、私はこんなに弱っているのよ…と見せつけて同情を買い、抱きしめてもらえたなら…と起こり得ない夢想を抱き。

ちょっと色気のない例えですが、関西人は初対面でもボケとツッコミの立場を素早く察知します。
この人の相手をするなら、ボケルしかないなぁ…なんて。
それは人間関係を円滑に進めたい本能のようなもの。

でもこのシーンの女心が果たして、強い男に強みを見せて弱い男に弱みを見せることへの本能的な察知と云うことに、単純につながるのかどうかが、男女間の奥深い処です。
おそらくレットなら見抜くことを、彼女は無意識の中で知っていたのでしょう。

町の娼婦とも関わりのあるレット。
スカーレットはお嬢様として崇めてもらうしか、自分のプライドが守れなかったのでしょう。

生きる術もなく、何もかも失ったボロボロの彼女だから。

そんな彼女の弱みと戦う姿を愛しく求めるレット。

金もうけに生きようと決めたのに、愛されることを捨てられない物語の中の人。

愛されたいのに金もうけにしか時間を費やせない現代人。

男の権威のドラマもいいけれど、女心が勇敢にざわめいているドラマが観たい!
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by nomelier | 2005-01-06 17:49 | Movie

シャボン フロム ニュージーランド

b0058500_1729736.jpgワインの大好きなG先生とワインの隠れ家へ。

まずはグラスシャンパンで喉を潤し、さて本日のとっておきの赤ワインをと云うときのこと、隣の席の女性が白ワインを次から次へとわたしたちにプレゼント。

その日、彼女は特別に気分が荒れているとのこと。

わたしとG先生はいたし方なく白ワインのおつきあいを。

聞けば彼女はニュージーランド人に嫁がれて、ニュージーランドに在住。
住んでみれば退屈な国で、暮らしてみれば退屈なご主人とのこと。

ぼやくのぼやくの。
倉敷にいらしたお父さまが亡くなられ、葬儀のために帰国され、明日は退屈なニュージーランドに帰られる前日でした。

ひょいと彼女の横顔を見つめると、肌の透き通るように美しい人でした。
思わず秘訣を伺いました。

後日、彼女から手作りの石鹸が送られてきました。
いえ、それよりもお手紙が。お手紙とともに「お試しあれ」とカードが。

でも探してもプレゼントはなく、おそらく彼女はそそかっしい人で、カードだけ送ってプレゼントを忘れられたのかなぁと思いつつ、そうこうしていると、たまらなくいい香りが纏いつき…。
封から落っこちた、小さな石鹸が机の隅にちょこんと転がっていました。

それは美しくなれる魔法の石鹸でした。

ラベンダーのたまらないほど切なくて濃厚な香りと、纏いつくような粘り気のある泡を生む、ニュージーランドの水の純粋さが、その石鹸の秘密だそうです。

ぼやきつつ生きていても、媚薬のような石鹸を丁寧に手作りしている遠い国の彼女。

きっとニュージーランドの水も、ご主人も、なにもかもを愛そうと努力されているのでしょう。

ふとしたことから出会ったゆきずりの人であろうと、その人を人生の印象に残すことが、人にはあります。
それはきっと旅の印象と似ているのでしょう。

手作りの人生をと願う新年の一日…
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by nomelier | 2005-01-06 17:29 | Diary