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かわいい女

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退職八等官の娘オーレンカは、のべつ誰かを愛していた。

愛する人なしには、一時もいられない女であった。

愛した相手によって価値観も生活も変わり、しかし男たちはいつまでも彼女の前にいなかった。

二人の夫に先立たれ、次に愛した男には遠くに去られ、全てを失った彼女からは生きる意味さえ消え失せて…

チェホフの「かわいい女」はわたしの大好きな短篇小説です。

のべつ誰かを愛していたオーレンカを、愚かな女と思えなくて、この世で「かわいい女」とはなになのか、この世で愛するとはどういうことなのか、愛とは…と考えさせてくれるのが、この小説の魅力です。

「かわいい」という日本語が外国でクローズアップされているそうです。

ご存じ、ギャルが連発する「かわいい」。

語源は古語の「カホハユシ」。
顔がほてる、まともに見るに耐えないの意味から、相手を痛々しく思う意味へ転じたそうです。

大正時代、一世を風靡した竹久夢二。昭和の戦前戦後に人気を博した中原淳一。

葉書、便箋、封筒、栞など、彼らのかわいいグッズは乙女心をくすぐりつづけました。

この便箋でラブレターを書いてみたいと買ったものの、たいせつにしまっているだけで、使う勇気もでない切なさ… 

わたしたちのおばあさんやお母さんが娘だったころ、そんなかわいくて恥じらいのある乙女心が、夢二や淳一を崇拝しました。

今の時代、女子高生たちが「かわいい」を連発し、そして共通のどこやら売り手側を侮蔑した哂い声をあげる風潮からは、乙女心が消え去った淋しさを感じます。

乙女チックは、いずこへ。

「かわいい」を漢字で書くと、「可愛い」。
字のごとく、愛することが可能である。愛されることが可能である。

そんな意味で「かわいい女」と呼ばれたなら?
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by nomelier | 2006-02-09 19:23 | Diary